プライオリティパスのラウンジ利用が減少?近年の動向と今後の展望

はじめに

プライオリティパスは、世界中の空港ラウンジを利用できる会員制サービスとして、長年多くの旅行者に愛用されてきました。しかし、近年、このサービスに大きな変化が起きています。特に主要空港において利用可能なラウンジが減少し、会員からの不満の声が増えている状況です。本記事では、プライオリティパスのラウンジ利用減少の背景、影響、そして今後の展望について詳しく解説します。

プライオリティパスとは

まず、プライオリティパスについて簡単におさらいしておきましょう。プライオリティパスは、世界中の空港ラウンジを利用できる会員制サービスです。通常、高額な年会費を支払うか、特定のクレジットカードの特典として提供されています。

プライオリティパスの主な特徴は以下の通りです:

  • 世界中の1,300以上の空港ラウンジが利用可能
  • 快適な待合スペース、無料の軽食やドリンク、Wi-Fiなどのサービスを提供
  • 一部の空港では、レストランやスパなどの施設も利用可能

このサービスは、頻繁に旅行する人々にとって、長時間のトランジットや遅延時の快適性を大幅に向上させる重要なツールとなっていました。

提携ラウンジが減少している背景

しかし、近年、プライオリティパスの提携ラウンジが減少しているという報告が相次いでいます。この背景には、複数の要因が絡み合っています。

1. 航空会社の自社ラウンジ強化

大手航空会社が自社のラウンジサービスを強化し、プライオリティパスとの提携を終了するケースが増えています1。これは、航空会社が自社の上級会員やビジネスクラス・ファーストクラスの乗客を優先し、ラウンジの混雑を緩和するための戦略です。

例えば、エールフランス – KLMスカイラウンジは、2025年4月1日よりプライオリティパスでの入室ができなくなることが発表されています1。これは、自社便や同盟航空会社の乗客を優先することで、ラウンジの混雑緩和や経費削減を図る動きの一環と考えられます。

2. 利用者増加による混雑問題

プライオリティパスの会員数が急増したことで、一部のラウンジが極端に混雑し、運営側が対応しきれなくなるという問題が発生しています。特に人気の高い空港や時間帯では、ラウンジが収容人数を超えてしまい、プライオリティパス会員が入室できないケースも報告されています。

この問題は、プライオリティパスが付帯するクレジットカードの普及により、以前よりも多くの人がサービスにアクセスできるようになったことが一因です。例えば、一部のプラチナカードでは、プライオリティパスが無料で付帯しており、これらのカードの普及により利用者が急増しました3

3. ラウンジ運営コストの上昇

インフレーションや人件費の上昇により、ラウンジの運営コストが増加しています。これにより、一部のラウンジ運営会社がプライオリティパスとの契約を見直す動きが出ています。

プライオリティパスは利用者1人あたりの支払いが固定されているため、利用者が増えすぎると採算が取れなくなる可能性があります。特に、食事やアルコール飲料を提供するラウンジでは、コスト管理が難しくなっているようです。

4. クレジットカード会社の方針変更

プライオリティパス特典を提供するクレジットカード会社の中には、サービスの改悪を行うところも出てきています4。例えば、2023年11月には楽天プレミアムカードのラウンジ利用回数が無制限から年5回に制限されました。また、2024年9月にはJCBと三菱UFJニコスもターミナル内レストランを対象外とすると発表しています。

これらの改悪の背景には、プライオリティパスの利用者急増によるカード会社の負担増加があると考えられます。カード会社にとっては、プライオリティパス特典の提供がコスト面で大きな負担となっているのです。

影響を受ける主な空港

プライオリティパスの利用可能なラウンジの減少は、世界中の多くの空港で見られる傾向ですが、特に以下の主要空港で顕著な影響が出ています。

1. ロンドン・ヒースロー空港

ヒースロー空港は、世界有数の国際ハブ空港であり、多くの旅行者がトランジットで利用する空港です。しかし、近年、プライオリティパスで利用できるラウンジの数が減少しています。特に、ブリティッシュ・エアウェイズが運営するラウンジがプライオリティパスの対象外となったことで、選択肢が大幅に減少しました。

2. ニューヨーク・JFK空港

JFK空港も、プライオリティパスで利用できるラウンジが減少している空港の一つです。特に、デルタ航空やアメリカン航空のラウンジがプライオリティパスの対象外となったことで、選択肢が限られています。

3. シンガポール・チャンギ空港

チャンギ空港は、世界最高峰の空港の一つとして知られていますが、ここでもプライオリティパスで利用できるラウンジの数が減少しています。特に、シンガポール航空のラウンジがプライオリティパスの対象外となったことで、高品質なラウンジへのアクセスが制限されています。

4. 東京・成田空港

成田空港では、一部のラウンジがプライオリティパスの対象外となっています。特に、日本航空(JAL)のラウンジがプライオリティパスで利用できなくなったことで、選択肢が減少しています。

5. バンコク・スワンナプーム国際空港

バンコク・スワンナプーム国際空港でも、プライオリティパスで利用できるラウンジの数が減少しています。2025年4月1日からは、エールフランス – KLMスカイラウンジを含む5つのラウンジがプライオリティパスの対象外となることが発表されています1。これにより、プライオリティパスで利用可能なラウンジは「ミラクルラウンジ」「コーラルラウンジ」「ターキッシュエアラインズラウンジ」の3カ所に限定されることになります。

これらの空港では、プライオリティパスの価値が以前と比べて大きく低下していると言えるでしょう。特に、長時間のトランジットや遅延が発生した際に、快適に過ごせる場所が限られてしまうという問題が生じています。

代替サービスの導入

プライオリティパスは、ラウンジの減少に対応するため、いくつかの代替サービスを導入しています。その一つが、空港内のレストランやバーでの食事クレジットです。

このサービスでは、プライオリティパス会員が対象のレストランやバーで一定額までの食事や飲み物を無料で楽しむことができます。例えば、成田空港では、プライオリティパスと航空券を提示することで、3,000円相当の高級すき焼きを食べることができるサービスが提供されていました7

しかし、このレストランクレジットサービスにも課題があります。

  1. ラウンジほどの快適性がない:レストランやバーは、ラウンジのような静かで快適な環境を提供できないことがあります。
  2. 時間制限:多くの場合、レストランクレジットの利用には時間制限があり、長時間の滞在には適していません。
  3. 混雑:人気のレストランでは、一般の利用客との競合により、席の確保が難しくなる可能性があります。
  4. サービスの縮小:一部のクレジットカード会社が、このレストランクレジットサービスも縮小する動きを見せています。例えば、JCBと三菱UFJニコスは2024年10月以降、空港ラウンジ以外の食事やリフレッシュ施設の利用を取りやめると発表しています7

これらの代替サービスは、ラウンジ利用の減少を完全に補完するものではありませんが、一部の旅行者にとっては有用なオプションとなっています。

今後の展望と対策

プライオリティパスのラウンジ利用減少は、サービスの価値を大きく低下させる可能性がありますが、同時に新たな機会も生み出しています。以下に、プライオリティパスの今後の展望と考えられる対策をいくつか挙げてみましょう。

1. 新たなラウンジとの提携拡大

プライオリティパスは、大手航空会社のラウンジとの提携が減少する一方で、新興の空港やラウンジチェーンとの提携を強化する可能性があります。特に、アジアやアフリカなどの成長市場では、新しい空港やラウンジが次々とオープンしており、これらとの提携を通じてサービスの拡大を図ることができるでしょう。

2. レストラン利用の拡充

前述のレストランクレジットサービスは、一部のカード会社で縮小される傾向にありますが、プライオリティパス自体はこのサービスを拡大する可能性があります。特に、ラウンジの代替として、より多くの空港内レストランやカフェとの提携を進めることで、会員に多様な選択肢を提供できるでしょう。

3. プレミアム会員向けの優先アクセス

ラウンジの混雑問題に対処するため、プライオリティパスは会員のランク制を導入したり、プレミアム会員向けの優先アクセスを提供したりする可能性があります。これにより、高額な年会費を支払う会員や、頻繁に利用する会員に対して、より確実にラウンジを利用できる機会を提供できるでしょう。

4. テクノロジーの活用

混雑状況をリアルタイムで把握し、会員に情報を提供するためのアプリケーションの開発や、予約システムの導入など、テクノロジーを活用してサービスの質を向上させる取り組みも考えられます。これにより、会員はより効率的にラウンジを利用できるようになるでしょう。

5. 新たな付加価値サービスの導入

ラウンジ利用以外の新たな付加価値サービスを導入することで、プライオリティパスの魅力を高める可能性もあります。例えば、空港内のショッピング割引、ファストトラック(優先保安検査)サービス、空港送迎サービスなど、旅行者のニーズに応じた多様なサービスを提供することが考えられます。

6. サステナビリティへの取り組み

環境への配慮が重要視される現代において、プライオリティパスもサステナビリティへの取り組みを強化する可能性があります。例えば、環境に配慮したラウンジとの優先的な提携や、カーボンオフセットプログラムの導入などが考えられます。

利用者への影響と対応策

プライオリティパスのラウンジ利用減少は、多くの利用者に影響を与えています。特に、頻繁に旅行する人々や、長時間のトランジットを伴う旅程を組む人々にとっては、大きな不便を感じる可能性があります。

しかし、利用者側でも以下のような対応策を取ることで、この状況に適応することができるでしょう。

1. 事前の情報収集

旅行前に、目的地の空港でどのラウンジが利用可能かを事前に確認することが重要です。プライオリティパスの公式ウェブサイトやアプリを利用して、最新の情報を入手しましょう。

2. 代替サービスの活用

ラウンジが利用できない場合に備えて、レストランクレジットなどの代替サービスについても事前に情報を集めておくと良いでしょう。